2月24日 ザルツブルク〜ウィーン

ザルツブルク〜ウィーン〜楽友協会

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列車に乗り込んでみたら、何とコンパートメント! 日本ではまず目にすることはないので、憧れていました。ちょっと嬉しいです。6席分、一区画独占です。
広々しているのでスーツケースもそのまま置けるし、通路とも区切られているので扉を閉めれば静かだし、全く言うことないですね。あんまり静かなんで、二つくらい隣の区画で携帯で仕事の話をしている人の声が耳についたくらいで、最高です。

コンパートメントの入り口には、席が予約されていることを示す黄色い紙が。これがない席は自由席として座ることができます。区間も「ザルツブルク〜ウィーン」と明記してあり、同じ席でもその区間以外なら自由席として使用可能。ちゃんと使った後を奇麗にして席を立つから、できるんでしょうね。当たり前のことなんですが、なんで日本ではできないのか。
この後、雪のため途中で45分ほど対向列車待ちをして、予定より40分ほど遅れてウィーン西駅に着きました。この後コンサートなので、早めの列車にしておいて良かったです。慌てていたので、列車の写真も駅の写真も撮らずじまいでした。治安の良いオーストリアと言えど、駅はなんとなく不安でしたし。

ホテルにチェックインして荷物を置き、着替えてウィーン楽友協会に直行。予約していたチケットを引き取ります。
この後、何度もお世話になるローゼンベルガーで食事をとって、黄金のホール、楽友協会の大ホールでのコンサートに臨みます。この写真は帰り際に撮ったものですが、入口ホールの天井です。

座席はステージに向かって左側の、ボックスのように一段高くなった場所の一番ステージ寄りでした。席としてはあまり良くないのですが、この写真でわかるでしょうか、実はこのボックス席の床はそのままステージにつながっており、ロープで仕切られているだけなんです。見てのとおり、演奏者の背後の席もすぐ近くまで迫っており、演奏者と聴衆の距離がものすごく近く感じられます。

別アングルでもう一枚。ニューイヤーコンサートの映像など見ていると、オーケストラがこのステージ一杯に広がって、その楽団員のすぐ隣、50cm位のところにもう聴衆がいたりします。文字どおり、演奏者と聴衆が共に「音楽の友」であることを実感したコンサートでした。

演目は、マキシム・ヴェンゲーロフのヴァイオリンとファジル・サイのピアノによる、バッハのヴァイオリンのための無伴奏パルティータ第2番ニ短調 BWV1004と、モーツァルトのクラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ変ロ長調 KV454、ブラームスのクラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ第3番ニ短調 作品108でしたが、実はどれも記憶に残っていません。
というのも、アンコール。鳴りやまない拍手に応えてヴェンゲーロフはアラン・リドの『フェルディナント』を語りも演奏も一人でこなしてしまいます。約15分くらいかかる、アンコールというにはあまりにも大盤振る舞い。語りも愉快で、会場は大受け。終わるや満場立ち上がっての歓声で、私も思わず立ち上がって拍手しちゃいました。

さて、このホールは響きが非常に豊かであることで知られており、残響2.1秒という数値は世界中で建築されるホールの目標値ともなっているほど。確かにサントリーホールやカザルスホールもこの数値に近い残響時間だったはずですが、実際に聴いてみると響きがまるで違いますね。
残響というのは要は音がホールの壁や天井などに反射して残る現象ですが、その性質上、どうしても高音域の残響が残りやすく、中低音域は音が消えやすくなります。サントリーホールもどちらかというと高音域の残響が目立ちますが、楽友協会は明らかに中音域の残響がもっとも豊かで、これが「黄金の響き」といわれる由縁でしょう。その原因は、この過剰にすら見える装飾にあるのではないか、と思いました。
一面に金箔の貼られた微小な凹凸の多い装飾は、高音域の残響をその微小な金箔の凹凸の間で吸収するはずです。その結果、中低音域の残響が残り、豊かな響きを感じさせるのではないでしょうか。

現代では、こうした見事な装飾性を持つホールは望むべくもありません。芸術にかけられる金額は限られ、効率ばかりが優先され、残響2.1秒という数字だけが強調されて、その質は全く考慮されることなく、その結果シンプルと言えば聞こえはいいけれど、装飾のない平面で構成されたホールが作られます。結局、楽友協会のような豊かな響きは生まれてこないわけです。
そこそこのものをいかに安く早く作るか、という効率ばかりを重視する見方から、極めて高品質のものをじっくりと手間暇かけて作る、という価値観に変化しない限り、芸術は廃れていってしまうのではないか、と、このホールの装飾を見ていて思いました。


続く