八ヶ岳高原の更紗灯台躑躅 - 信州四季の風景

平成19年 6月30日 10時26分　八ヶ岳高原の更紗灯台躑躅

接写は以前紹介したことがあるので、今回は引いた画面で狙ってみた。

右側に見える赤い模様も更紗灯台躑躅（サラサドウダンツツジ）で、高さ5m位にもなる樹が群落を成している。遊歩道を覆うように枝が伸びており、見上げると灯台躑躅が星のように頭上に広がる。ここまで育つのに数百年は掛かっているらしい。鎌倉か室町か江戸の初めか、その頃に芽吹いた躑躅が、今花盛りを迎えているのだと思うと、何か人知を超えた、尊い存在のような気がする。尤も、大きな樹というのは皆そのようなものなのだが。

物思はず道行く行くも青山をふり放（さ）け見ればつつじ花香少女（にほへをとめ）櫻花榮少女（さかえをとめ）汝（なれ）をそもわれに寄（よ）すとふわれをもそ汝（なれ）に寄すとふ荒山も人し寄すれば寄そるとぞいふ汝（な）が心ゆめ
　物不念道行去毛青山乎振放見者茵花香未通女櫻花盛未通女汝乎會母吾丹依云吾〓毛會汝丹依云荒山毛人師依者余所留跡序云汝心勤
　物も思わず道を歩きつつ、青山を振り仰いで見ると、そこに咲いているツツジの花のように色美しい少女よ、桜花のように咲き盛る少女よ。お前と私と仲がいいと噂しているそうだ。私とお前と仲よしだと噂しているそうだ。あの人気もない荒山ですら、仲がいいと誰かが噂を立てるとひどく評判になるというから、気をつけなくてはいけないよ。（萬葉集巻十三 3305）