八ヶ岳高原海の口自然郷に、「せせらぎの小径」と名付けられた散策路がある。
「高原へいらっしゃい」の初回版が放送され、元支配人、杉本昌三氏の写真集『高原の詩人たち』が出版された頃には、夏になるとひっきりなしに人が訪れたものだが、最近は知る人も少なくなって手入れの頻度も減ったため、少し寂びれた感じがする。そのせせらぎの小径の終点が、杣添川の小さな淵となっている。
淵といっても底が見えないほど深いわけではない。むしろ透明度は高く、泳いでみたい誘惑に駆られる。首都圏に住んでいた頃は良くこの水を持ち帰り、カタダインの浄水器で漉してお茶を淹れたものだ。
水の流れは年中変わることなく、緩やかな岩の滝を流れ落ちてくる。しばらく時間を忘れて、見入っていた。
五月山 花橘尓 霍公鳥 隱合時尓 逢有公鴨
五月の山の花橘にホトトギスが隠れ隠れして鳴くように、わたしが隠れている時に、あなたにお逢いできて嬉しい。(萬葉集 巻十 1980)
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