松本城の梅が、ほぼ見頃を迎えた。
春といえば桜だが、桜がどちらかというと武家の印象を持つのに対し、梅は雅な印象を持っており、好みである。白梅・紅梅と対で咲く姿は紅白の幕に似て明るく、春の喜びを一身に表すかのようだ。平安期では、花見といえば梅の花であった、とも聞く。
松本城は桜の名所として知られるが、一隅にはこうして梅が育ち、一足早い花見客の目を楽しませてくれる。この日、紅梅の方はまだ五分咲きといったところで蕾が多く、専ら白梅を追った。逆光に透ける白が松本城の黒壁に映えて美しい。梅が桜に変わる頃、信州はやっと春の盛りを迎える。
春されば散らまく惜しき梅の花暫は咲かず含みてもがも
春去者 散卷惜 梅花 片時者不咲 含而毛欲得(萬葉集 巻十 1871)
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