さて、桜である。
松本周辺には桜が多く、この時期、どこへ行っても目にすることが出来る。堤防や学校から小さな公園に至るまで、大小の違いはあれ、どこでも花見の宴が盛んである。松本ではこの時期でも夜になると冷えるためか、日中、お弁当など持って花の下で静かな時を過ごす人が多いのは、好ましいことである。
花見という語が用いられるようになったのはそれほど古くはなく、平家物語に「女院、法勝寺へ花見の御幸ありしに」として現れるのが最も古い例らしい。時代としては鎌倉から室町頃にあたる。武家社会になり、その散る姿が称えられる様になったからであろうか。桜の散る姿を映像に捉えるのは非常に難しい。それだけに尚、花吹雪は心に残る風景となる。
櫻花時は過ぎねど見る人の戀の盛りと今し散るらむ
櫻花 時者雖不過 見人之 戀盛常 今之將落(萬葉集 巻十 1855)
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