信州の秋は、蕎麦の花に始まる。一面、白い絨毯のような花畑が広がるので、良く目に付くのである。
世界大百科事典で『蕎麦』の項を開いてみたら、現在の麺類としての蕎麦、蕎麦切りは江戸時代の初め頃に広まり、伝聞の域を出ないながら、『風俗文選』に「信濃国本山宿より出て」とあるのだそうで、やはり信州と言えば蕎麦なのか、と思う。
実際、松本に来るまでは乾麺を買っていたのに対し、松本に来てからは生麺を買うようになった。味がまるで違う。スーパーで売っている二人分200円位の蕎麦でこれなのだから、まして本格的な蕎麦は全く違う。個人的に美味しいと思っているのは、長野道梓川サービスエリア(下り線)や道の駅安曇野松川などで売っている、新聞紙に包まれた蕎麦(商品名は忘れてしまった)であり、店では松本からは遠いが女神湖畔にある『水車茶屋』の蕎麦である。
なお、撮影したこの場所は、国営アルプスあづみの公園の開発予定地なのだそうで、近いうちにこの風景は見られなくなるかも知れない。地元にいると、こうした風景を潰しておいて、自然がどうの、と言うのは一体何のことやら、と思うのだが、まぁ、拙速な判断は避けておくことにしよう。
秋の野の尾花が末の生ひ靡き心は妹に寄りにけるかも
秋野 尾花末 生靡 心妹 依鴨(萬葉集 巻十 2242)
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