地元でもほとんど知られていないが、私はこの桜並木が気に入っている。
全体で10本余りだろうか、小川沿いに植えられた桜で、数としては大したことはないが、見ての通り、残雪の北アルプス、常念岳を背後に見事な春の彩りとなる。この日、目敏い写真家達が何人か、三脚を立てていた。
花見と言っても私の場合はこうした写真になる桜を探すことが多く、一般に言う花見とは自ずと異なる観点に立つ事になる。だがこれも、写真になる風景を探す、という視点があって初めて見つかる風景であり、その意味では、レンズを通してものを見る、という行為が、決して対象を蔑ろにすることではないように思われてくるのである。
信州の春の盛りは過ぎ、駆け足で初夏へと向かっていく。
出でて見る向ひの岡に本繁く咲きたる花の成らずは止まじ
出見 向岡 本繁 開在花 不成不止 (萬葉集 巻十 1893)
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