霧ヶ峰にもようやく遅い春が来た。
麓ではすっかり桜も終わったこの時期、ビーナスライン全線が開通したのを受けて、標高2,000mの春を探しに行った。一見すると寒そうな風景であるが、よく見れば木々は芽吹き、枝先が赤くなっているのが分かる。花の蕾の如く、一斉に葉が開く寸前である。
この写真を撮った場所は、実は私の隠れたお気に入りの場所である。霧ヶ峰の中でも最も人が訪れない場所の一つではないだろうか。一応標高1,792mの山頂なのではあるが、ガイドブックや登山地図はもちろんのこと、国土地理院の地図を見ても山の名前がない。もしかしたら本当にないのではないか。
すぐ隣の頂には、
ちなみに「乙女」、平安時代「成人に達した未婚の女子」の意味だったとは、つい先程辞書を引いて初めて知った。やはり辞書は引くものである。
人の親の少女兒据ゑて茂る山邊から朝な朝な通ひし君が來ねばかなしも
人租 未通女兒居 守山邊柄 朝〃 通公 不來哀(萬葉集 巻十一 2360)
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