これが8月29日の風景と同じ場所からの撮影とは俄には信じられない、全く上空から見た雲海に浮かぶ常念岳のようであるが、嘘ではない、地上から写した風景である。
安曇野の晩秋、朝方には霧がよく出る。田や畑から昇る水分が冷えた空気に接して水蒸気となり、霧になるのであるが、ものの100mも登れば霧を抜け、こうして青空が広がっている、ということには地元でもなかなか気付く人がおらず、人間というものはつくづく土に根差した生き物なのだ、と思う。天気予報では晴なのに霧に閉ざされている時、高速道路が霧のため50km/h規制になったり、航空機が離着陸を諦めるような時は、意外とこうした天上界の風景に接する好機なのである。
今年の秋はなぜか山の写真ばかり撮っているが、松本から安曇野に引っ越したばかりで、まだ精神的に地に足がついていない所為かも知れない。来年はもう少し、紅葉や木の実の風景なども探してみたいものである。
秋の夜の霧立ちわたりおぼろかに夢にそ見つる妹が姿を
秋夜 霧發渡 凡〃 夢見 妹形矣(萬葉集 巻十 2241)
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