秋は空気が澄む。
特に安曇野では、北は白馬から南は乗鞍まで、一望の元に見渡せることが少なくない。この日、買い物がてらどこかで山の写真でも、とカメラを持ち歩いていたところ、春に桜の写真を撮ったあたりで丁度日が暮れてきた。
秋は夕暮れ、とは清少納言の枕草子だが、確かに秋の夕暮れは美しい。雲が赤く染まり始めてから写真が撮れないほどの暗さになるまで、僅かに15分。カメラを持ち替える間にも、色合いは刻々と変わってゆく。一枚一枚、真剣勝負のような気持ちでシャッターを押した。
ぬばたまの寝ての夕の物思に割けにし胸は息む時もなし
黒玉之 宿而之晩乃 物念尓 割西〓者 息時裳無(萬葉集 巻十二 2878)
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