千曲市(旧更埴市)の森地区は、別名あんずの里と呼ばれ、ほぼ全域が杏畑となっている。
杏は別名を唐桃と言い、中国原産だが日本にも平安時代頃に伝えられた。個人的には、杏のシロップ漬けが大好物である。春先、梅に次いで桜より早く花期を迎え、一面の薄桃色が、春の到来にいかにも相応しい。
あんずの里を訪れたのはこれで二度目だが、どうも巧く写真にならなかった。元々栽培用なのだから当たり前と言えば当たり前だが、電線や畑の境界を示すビニールテープなど、あまり似つかわしくないものを避けると、どうしても写す範囲が狭くなり、一面の杏という感じが出ない。しかも付近には、演歌を掛け流す屋台が軒を連ねるなど、落ち着いて杏を楽しむ気にもなれない。前回同様、すぐに近くの禅透院という寺の境内に逃げ込んでそこに咲く杏の花を楽しんで、すぐに帰って来てしまった。どうもあんずの里は、自分には合わないようである。
ちなみに、後方の山は戸隠山の北にある高妻山(2,353m)である。
春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ少女
春苑 紅尓保布 桃花 下照道尓 出立〓嬬
春の苑は紅に美しく輝いている。桃の花の色が赤く映える道に出で立つ少女の姿よ。(萬葉集 巻十九 4139)
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