ファインビュー室山近くにある室山池で、睡蓮が見頃を迎えた。
室山は松本市の西、安曇野のほぼ南端に位置する旧三郷村の山の名である。麓との標高差は100mにも満たない小さな山だが、松本平に向かって傾斜した扇状地の要に位置するため、展望が素晴らしい。山頂近くにあるファインビュー室山には、松本を一望する露天風呂があり、人気が高い。
室山は、「でいらぼっちゃ」(だいだらぼっち)の服から落ちた土で出来たという伝説があり、東の高ボッチと好一対を成している。だいだらぼっちの伝説は常陸國風土記にあるというから、萬葉集よりも古い。政治性が何も感じられないところから見て純粋な民間信仰なのだろうが、それにしては広く流布しているものである。
さて、睡蓮。最近「水蓮」という表記を見かけるが、これは誤字・当て字であろう。夜になると閉じる蓮ということから、「睡」の字が用いられているのである。植物名を全てカタカナ表記するというのは植物学会が定めた表記法のようであり、学問上はその方が表記の揺れがなく好都合であろうが、日常生活では別である。本来漢字表記されていたものをカタカナ表記してしまうと、語源や由来が分からなくなる。睡蓮にしてもそうであるし、例えば灯台躑躅など、カタカナでは絶対語源が分かるまい。折角日本語として美しい字を用いていたのに、外来語と区別せず一絡げにカタカナ表記してしまうのは、あまりにも勿体ない。従って当サイトでの植物名は、全て漢字表記として振り仮名を振っているのである。
われのみや斯く戀すらむ杜若丹つらふ妹は如何にかあるらむ
吾耳哉 如是戀為良武 垣津旗 丹頬合妹者 如何將有
私ばかりこんなに恋しているのでしょうか。カキツバタのように美しい面立ちの妹は、どんな気持なのでしょうか。(萬葉集 巻十 1986)
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