田多井観音堂の枝垂れ桜は、以前も一度紹介した。その時はアップの写真にしたが、今回は思い切り引いてみた。
といってもやはり全体は収まらない。見上げるばかりの巨樹である。
田多井観音堂といっても観音堂は既になく、墓地だけが残っている。「櫻の樹の下には屍体が埋まつてゐる!」と書いたのは梶井基次郎だが、そこが墓地では当たり前過ぎてちょっとお話にならない。だが、毎年これ程の桜に彩られる墓というのは、かえって明るい感じがする。
亡き人と共に愉しむ花見も、また良いものであろう。
朝戸出の君が姿をよく見ずて長き
朝戸出之 君之儀乎 曲不見而 長春日乎 戀八九良三
朝戸をあけて帰るあなたの姿をよく見なかったので、長い今日の春日を一日中、恋しく思って暮すことでしょう。(萬葉集 巻十 1925)
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