今年の
鹿が花芽を食べてしまうからだそうで、実際、白昼堂々とビーナスラインを横切る鹿を見て驚いたことがある。普通なら遠くから人の姿を見かけただけで逃げてしまうほど警戒心の強い鹿が、車が何台も行き交う休日のビーナスラインをゆっくりと横切っていったのだ。単に人馴れした、というよりは、食べるためにそこまでしなければならなくなった、と考えた方が良さそうだ。
数年前なら丘が黄色く染まっているようにすら見えるほどの日光黄菅だが、今年はこの週末がピークであることは間違いないのに、花が群れているところを探さなければならない程少ない。
鹿も心得たもので、と言うか自然とそうなってしまうのだが、国定公園である霧ヶ峰なら狩られることがないので、安心して生息していられる。その結果、霧ヶ峰や美ヶ原のような景勝地に限って食害に遭ってしまうのである。
対策は鹿を狩ることなのだが、何かそれも方向性を間違っているような気がする。増え過ぎれば餌が枯渇し、鹿の数は減る。自然はそうやってバランスを保ってきたのだ。とすると、日光黄菅が少なくなったことを嘆く自分の心情の方が自然から離れているのではないか。毎年日光黄菅が咲き乱れることを期待する方が間違っているのではないか…。
いろいろと考えさせられることの多い今年の霧ヶ峰だった。
大土 採雖盡 世中 盡不得物 戀在
大地ですら、採っていったら尽くせもしようが、どうにも採り尽せないものは恋心なのだなあ。(萬葉集 巻十一 2442)
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